とある客先常駐の一日

朝7:30分。iPhoneのアラームが鳴り響く。

スヌーズ機能のおそらく3回目か4回目あたりだろうか。

「ここまでか。。やむなし。。」

カーテンの隙間から差し込む朝日に観念しモッタリと、いやネットリと体をひねり起こす。

現場の就業開始時間は9時。

自社の面を汚すわけにはいかないので遅刻には十二分に気を付けなければならない。

フレックス、シフト勤務?プロパーにのみ与えられているらしい権利はこちら側の世界では無関係な話だ。

風呂や服の準備は前日の夜に済ませてある。

朝はギリギリまで寝ていたいためその準備には抜かりない。

起床して15分以内には出向先へと出発する。

運動不足の解消と交通費の節約を兼ねて始めたクロスバイク通勤。

片道7kmとそこそこ距離はあるが慣れればどうということはない。

朝食は秋口の新鮮な空気だ。

30分のサイクリングを経て現場に到着。

セキュリティドアの前で一つ深呼吸を入れ、感情とかセンシティブな内面のなんかその辺のスイッチをOFFにしておく。これは数多の客先常駐をこなして習得した妙技の一つであり、荒れすさんだIT業界の世界では非常に重宝すべきスキルである。

フロアに突入すると、朝当番のプロパー1人と数人の出向人が先着している、いつもの光景が見渡せる。

「おはようございます」

大きすぎず、小さすぎずを意識した絶妙なボリューム感で挨拶を交わす。

何故かいつも特定の一人にスルーされるのは恐らく先方の耳が遠いのであろう。

細かいことは気にしない。

就業開始までは少し時間があるが、隣に座る自社の先輩は既にノートPCの画面にかじりつき、バリバリ仕事を消化し始めている。

彼は仕上がっている。

我々は客先常駐組。成果報酬ではなく人月単価で報酬を受け取っている立場。

回転を上げて多くの仕事を捌いたところで給与に反映されることはなく、無駄に疲労感が残るだけなのだ。

「技術的に興味がある」とか「スキルアップ(≒転職)に繋がる」業務内容であれば自分のために頑張るという選択もある。しかし、残念ながら今回の案件は完全にハズレだ。

悪目立ちせずにそれなりに仕事をし、賢くアピールしていればOKというのが正直なところ。

とはいいつつも、特段することもないので前日の夜の内に溜まったメールチェックを行う。

業務開始後はギアを一段上げ、それなりにこなす。

「定時に帰る!」をモチベーションに。

仕様?バグ?直してくれればどっちでもいい。所詮よそ様の製品だ。

ユーザとプロパーの間で理不尽サンドイッチになりつつも、何事にも動じないメンタリズムで耐え忍ぶ。我ながら訓練された客先常駐である。

ふと珍しく自社からのメールが飛んでくる。

「事業部懇親会の案内・・・か」

業務多忙のため不参加としておこう。

普段各所に散っている自社メンバがたまに集まって酒を飲みグチを言うだけの会の意義が良くわからなくなってきた事もあり、この手の会合には最近はあまり参加していない。

新しい案件を斡旋してくれるのであれば喜んでいくが、そう都合よい人事はない。

会社行事なのでとりあえず査定には影響するらしい。

そうこうしている内に昼休みとなる。

昼休み?なにそれ?おいしいの?と言わんばかりにカタカタと働き続ける先輩を横目に私は席を離れる。

やはり彼は仕上がりすぎている。

コンビニで買ったパンとコーヒーを引っ提げ、外のベンチに座りスマホをいじりながらブレイクタイム。昼休みは午後の労働へ向けてアヘ顔をかますほど全力で脱力するのが望ましい。

休み時間をフルで消化したのを確認し持ち場へ戻る。

午後も自分のペース配分崩すことなく、目標(定時)までのスケジュールを着々とこなしていく。外的要因により不可抗力的にタスクが増えることも少なくないのだが、そのような場合はツキがなかったと諦めるしかない。

しかし実際のところ飛び込み作業がなければ定時に上がれることも多く、拘束時間という点だけみると良い現場といえる。業務内容はSEとすらいえない様なアレなものだが。

業務終了の18:00の表示を見届けると、速やかにPCをシャットダウンし

「お疲れ様でしたー」

と帰りはできる限り爽やかなトーンで挨拶をして帰る。

帰りが早ければ早いほど爽やか成分を増し増しで挨拶すると印象度が良い分、なんとなく帰りやすい。これは自己満足の域。

日が暮れてからの空気は少し冷たく、

帰りのペダルは行きよりも少し軽い。

そんな客先常駐のありがちな一日。

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